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「IIJとソニーのDNAで挑む」土壌水分センサー ― 新たに加わったセンシフィアの会社紹介(IoP技術者コミュニティ 第6回定例会)

8 時間前
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2026年9月15日(火)、高知県の「IoP技術者コミュニティ」第6回定例会で、今年6月にコミュニティに加わった株式会社センシフィアの取締役 CTO(センシング技術開発担当)、堀井 昭浩さんに会社紹介をしていただきました。タイトルは「IIJとソニーのDNAで挑む 〜独自技術による新たな土壌水分センサーの革新〜」。センシフィアは、通信のIIJとセンサーのソニーが、農業のために設立した合弁会社です。RF信号(電波)を用いたセンシング技術を土の中に向け、これまで「目安」として扱われることの多かった土壌水分センサーを、灌水の判断に使えるようにしようとしています。高知県内の生産者とも評価を重ねています。


IoP技術者コミュニティは、データ連携基盤SAWACHI(IoPクラウド)の取り組みを拡げるために高知県が設置したコミュニティです。IoPに用いられているIoTやAIの技術の開発と普及、参加者の技術向上とネットワーク形成を目的としています。高知県が主催し、PROMPT-Xは事務局の運営を受託しています。



通信とセンサーの技術を、農業のために


IIJのプレスリリースにあるように、センシフィアは株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)とソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社が設立した合弁会社で、2026年4月1日にスタートしました。同じリリースには、代表取締役社長 CEO 齋藤 透さんの次のコメントが載っています。


気候変動や異常気象が日常化しつつある今、農業はかつてない試練に直面しています。太陽が昇る前から土に触れ、風を読み、経験と勘を頼りに試行錯誤を繰り返す―そうした農業に挑む人たちの不安や苦悩を軽減したいとの思いから、新会社を設立しました。

社名は Sense(感知)と Sophia(知恵)を組み合わせたもので、「農業を読む、未来をセンシングする。」を掲げています。紹介では、IIJの通信・サービス基盤とソニーのセンサー技術を組み合わせていること、測定の方式も技術も製造も国内であることが紹介されました。


堀井さんは、ソニーの研究開発の最前線で20年以上、技術開発に携わってきたエンジニアです。取り組んできたのは、センサーと超低消費電力のエッジAI、低消費電力で遠くまでデータを送れる通信、データから異変の予兆をとらえる分析を組み合わせ、地球上のあらゆる場所をセンシングする研究開発です。農業への応用にも取り組み、環境への負荷が小さく持続可能な農業の実現を目指してこられました。


センシフィアのセンサーは、ソニーで培われたRFの技術を使って土の中の水を測ります。会場では、手に持ってどこでも簡単に土壌水分を測定可能なポータブルビューワの試作品が紹介されました。



「目安」にとどまってきた土壌水分センサー


土壌水分センサーはこれまでも市販されてきましたが、灌水の制御にまで使われている例は多くありません。発表で示された施設農家55名への調査(マイファーム生産者ヒアリング調査、2023年8月〜2024年4月)では、水分センサーを検討したことがある人が43%だったのに対し、自動灌水に実際に使っている人は8%でした。一方で、適正な価格で使えるセンサーなら購入したいという人は89%にのぼります。


使われてこなかった理由として挙げられたのは、初期費用が数十万円規模になると投資を回収できる見通しが立てにくいこと、センサーの値が「目安程度」と受け止められて精密な制御には信頼されていないこと、データの見方が分からず測るだけで終わりやすいこと、の3点です。堀井さんたちは、センサーが目安としてしか使えないという点を問題と捉え、従来のセンサーが長期間安定して測れないことには、原理的な課題もあることが分かってきたそうです。


センシフィアのウェブサイトにあるように、従来の水分センサーは土とセンサーのプローブとの間にわずかな隙間があるだけで値がばらつきやすく、目安としてしか使えないことが課題でした。同社は、測定値を「参考値」から「判断基準」にすることを掲げています。


RFセンシングを土の中へ ― SFDT方式


従来の方式は、プローブの電極に密着した土の水分を測ります。そのため、プローブのまわりに隙間があったり、塩分や肥料の濃度が高かったりすると正しく測れず、腐葉土やロックウール、ヤシガラのような固形培地では測りにくいという説明でした。


センシフィアの方式はSFDT(空間周波数域透過法)と呼ばれます。二又のプローブの片方が電波を送り、もう片方が受け取って、その間にある土の水分を測ります。プローブに土がついていてもいなくても、間にある土の水分が測れるという考え方です。土に隙間があっても、塩分や肥料の濃度が高くても影響を受けにくく、腐葉土や固形培地でも測れるそうです。



「培地を選ばない」ということは生産者にとって重要なポイントです。粘土・黒ボク土・砂土といった土壌や、ヤシガラ培地・ロックウール・ピートモスといった固形培地で、高設栽培・施設土耕・露地栽培といった様々な生産者にテストしてもらっているそうです。茎などにあてて、土の中の水分と茎の中の水分がどう関係しているかを見ることもできるという話もありました。


もう一つの特長が、長く使っても値が安定していることです。土は乾いたり湿ったりを繰り返すうちに、プローブのまわりに隙間ができます。トマトの実証ハウスで、1日に数回の灌水を同じ条件で続けて比べたところ、従来の方式では47日後に灌水への反応が小さくなり、センサーごとのばらつきも目立つようになりました。SFDT方式は47日後も初日と同じ形と振れ幅の波形を保っていたという結果が紹介されました。



水分の分布が分かると、水やりが変わる


センサーで分かることと、それによって変わることが3つ示されました。


  • 圃場の中の水分の分布が分かれば収量や品質の向上につながる

  • 水ストレスなど作物の状態が分かれば生理障害や病害のリスクを下げられる

  • 水や肥料の与えすぎが分かれば資材費・水道代・作業時間を減らせる


水の量を適切に管理すると、与える水を2〜3割減らせた例もあるそうです。施設栽培では与えた水の3割ほどが廃液になるといわれ、これを限りなくゼロに近づけられれば、液肥の量が減り、地下や河川に流れ出る環境への負荷も下げられるという説明でした。


収量は水分の分布と関係していることが多く、同じ圃場でも場所によって条件が違うそうです。畝の断面に格子状に測定点を置いて水分を測った例では、収量が高い圃場では畝の中の水分が比較的均一に広がっていたのに対し、収量が普通〜低い圃場では水分が一部に偏り、地表面に水がたまってベタベタの状態でした。このように畝の中の水分の分布を調べることで、根の張り方や収量の違いとの関連が明らかになると期待されます。



八ヶ岳での事例も紹介されました。高温による生理障害だと思われていた症状が、センサーで調べると実際には水の管理によるものだったそうです。同じ八ヶ岳の農業学校では、学生が毎年、水ストレスをかけて甘いトマトをつくる栽培に挑戦してきましたが、萎れる限界を見極められずに失敗が続いていました。センサーを使って水を管理したところ、糖度12度以上のトマトができ、100gあたり700円で売れたそうです。水ストレスをかけない制御では果実が重くなり、あえて水ストレスをかける制御では糖度が上がるという結果も示されました。センサーを使えば、萎れる寸前の水分を狙えるということでした。



2023年夏の猛暑の中でのセロリの栽培では、適正な水分の幅がとても狭いという例もありました。体積含水率が40%を超えると病害のリスクが、20%を下回るとカルシウム欠乏による生理障害のリスクが高まり、安定して育つのは20〜40%の範囲とされていました(閾値は土壌の条件で変わるそうです)。


センサーの効果としてもう一つ、生産者の行動が変わることも大事な点に挙げられていました。水やりの変化が「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」の6つで整理されていました。「朝と昼と夕方」だった水やりが「あと1時間後」に、「全部やっておかないと」が「この場所だけ」に、「ワタシでないと」が「仲間で」に、「いつも不安」が「こういうデータだからこうしよう」に変わる、といった具合です。


この視点は、昨年度の成果報告会で話題になったこととも重なります。ネポン株式会社の実証事業に協力した生産者の古川裕典さんは、労務管理の手法を取り入れて作業を従業員に任せられるようにし、生まれた余裕をさらなる学びや経営の拡大につなげてきました。データにもとづいて方針を立て、パートさんや従業員に任せられる作業が明確になれば、生産者の負担も軽減されるのではないでしょうか。


生産者と一緒に評価を重ねる


センシフィアは、生産者にセンサーを使ってもらいながら評価を重ねています。発表では「TAKUMI VOICE」として、同社が尊敬する「匠」の生産者に何年もセンサーを使ってもらい、その効果を聞き取った事例が紹介されました。お二人の事例は、マイナビ農業の記事でも紹介されています。



千葉県八千代市のきむら農園の木村さんは、ミニトマトとマスクメロン、米を手がけています。手作業の灌水がセンサーで見るときれいな波形を描いていて、感覚と数値が合うことを確かめられたので、灌水をセンサーに任せられるようになったそうです。ミニトマトの灌水は全自動になり、灌水のことを考えていた1日1時間ほどが空き、田植えや稲刈りでハウスを離れる時期も遠隔で管理できるようになったといいます。発表では、「水やりが気になる」という精神的な負担から解放されたことが大きい、という話もありました。


神奈川県海老名市の尾上農園の尾上さんは、高糖度トマトひと筋35年。一人で管理できるのは300坪が限界といわれる高糖度トマトで、約700坪を一人で管理しています。肥料濃度は一般的な養液栽培の約3分の1で、萎れる寸前まで水を絞る「攻めの水管理」を、センサーの数値を見ながら行っているそうです。マイナビ農業の記事によれば、「寝る前にハウスへ」という夜の見回りは、スマートフォンでの確認に変わりました。


堀井さんたちは、会員企業の方の紹介で高知の大学やIoPの関係者とつながり、毎月のように高知を訪れて、生産者や研究者、普及の担当者と出会ってきました。発表では、2024年から評価が続く四万十市のピーマンをはじめ、四万十市のトマト、宿毛市のミョウガとイチゴ、土佐清水市のキュウリ、高知県農業技術センターのナスとニラで評価してもらっていることが紹介されました。幡多農業振興センターの主導で始まり、2026年8月からは中央西農業振興センター 高吾農業改良普及所でも検討が始まっているそうです。成果が出始めていて、複数年での使用や、ほかの作物への展開の要望も寄せられているとのことでした。



マイナビ農業の記事では、高知県のキュウリ産地で、新規就農者が篤農家の水分データを見て灌水を補正し、数か月後には篤農家の水やりのパターンに近づいた事例が紹介されています。


IoPクラウド(SAWACHI)への接続と、M5Stackでの試作


IoPクラウド(SAWACHI)につなぐ取り組みも紹介されました。香南市の有限会社イチカワは、IoPクラウド(SAWACHI)専用の環境測定装置「アウル」を販売しています。このアウルにセンシフィアのプローブと日射計をつなぎ、SAWACHIへデータを送ります。センシフィアのセンサーの来春の発売に向けて、イチカワに評価してもらっているとのことでした。



センシフィアのプローブは汎用性の高いセンサーです。例えばM5Stack(M5CoreS3 SE)にRS485(Modbus)でつなぎ、体積含水率と土中温度を画面に表示した試作も紹介されました。スマホアプリからBluetoothで測定値を読むこともできます。


センシフィアのウェブサイトによれば、センサープローブの出力はSDI-12またはRS485(Modbus)で、他社製の環境制御装置などにつないで使えます。また、圃場内の水分分布を測って灌水の代表点を見極めるのに役立つポータブルビューワ、クラウドで見える化して灌水の判断を支援する灌水ナビ、既存の灌水制御装置と連動して自動灌水する灌水コントロールの提供を予定しています。マイナビ農業の記事によれば、センサープローブは2027年3月に提供が始まる予定だそうです。


おわりに


発表の最後には、センシフィアのステートメントが映されました。


センサーの普及がゴールではありません。農業のあり方そのものを根本から革新し、人と地球の明日を確実に守り続けることがSensiphiaの揺るぎない使命です。

通信とセンサーの先端技術を持つ開発者が、高い志をもって農業に挑んでいます。生産者の圃場で評価を重ね、高知にも通って、普及の現場やSAWACHIに対応した装置のメーカーとも取り組みを進めています。センシフィアの考え方や現場での取り組みは、公式noteでも発信されています。


センサーの普及そのものではなく、農業のあり方を問い続け、持続可能な農業を守っていくことを究極のゴールに置いている点で、高知県のIoPの取り組みと目指している方向が同じだと感じました。センシフィアがIoP技術者コミュニティに参加したことで生まれる化学反応に期待が高まります。


定例会は、こうした会員企業の取り組みを知り、参加者どうしのつながりをつくる場です。PROMPT-Xは引き続きIoP技術者コミュニティの事務局として、会員企業の挑戦を紹介していきます。


PROMPT-Xでは仲間を募集しています


PROMPT-Xは東京・鹿児島・高知に拠点を置き、お客さまの現場に入り込んで、業務課題に対して生成AIを含む最新技術をどう活かすかを一緒に考え、実装まで伴走しています。地方拠点から全国の先進企業・自治体と直接取引を行い、上流設計から実装まで一気通貫で手がける環境です。こうした活動に興味がある方は、採用情報ページをご覧ください。鹿児島での募集はジョブアンテナ鹿児島もあわせてご覧ください。


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