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高知高専と高知工科大学を訪ねて ― IoP技術者コミュニティ施設見学会レポート:LiDAR、モデル予測制御、四足歩行ロボット、社会科学まで

1 日前
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2026年8月21日(金)、高知県の「IoP技術者コミュニティ」の施設見学会として、高知工業高等専門学校(南国市)と高知工科大学 香美キャンパス(香美市)を訪ねました。IoP技術者コミュニティは高知県が主催し、PROMPT-Xは事務局の運営を受託しています。今回の施設見学会に参加したのはコミュニティの会員企業や高知県の関係者あわせて21名。高知市内からバスで移動し、高専では実習工場とIoT工房の見学と5名の先生方による研究紹介、工科大では四足歩行ロボットの研究チームの見学、その後は高知市内で懇親会という一日でした。


IoP技術者コミュニティは、データ連携基盤SAWACHI(IoPクラウド)の取り組みを拡げるために高知県が設置したコミュニティです。IoPに用いられているIoTやAIの技術の開発と普及、参加者の技術向上とネットワーク形成を目的としています。今回は「ロボット」「制御」「化学分析」「地域の記録」と、現場の課題に様々な角度から取り組んでいる研究室を回りました。


高知高専 ― 実習工場とIoT工房、5つの研究室



最初に案内していただいたのは実習工場です。旋盤やフライス盤に加えて、5軸加工機が1台、CNC旋盤が2台。学生が実際に手を動かして加工を学ぶ設備が並んでいます。訪問の翌日がオープンキャンパスで、学生が展示物を製作している最中でした。



続いて起業家工房内のIoT工房へ。IoTという言葉が出はじめた10年ほど前に、ものづくりを支援する部屋として作られ、その後アントレプレナーシップ教育の流れで起業家工房として位置づけ直されたそうです。


ここでは吉岡先生に、装置を一つずつ紹介していただきました。ロボティクスコースの実習で使う、ものをつまんで置く(ピックアンドプレイス)動かし方を学ぶロボットアーム。Webカメラの物体検出とサーボモータでエアホッケーをする制御演習の装置。そして、カメラを載せた開発中の移動台車ロボット。これは後ほど吉岡先生の研究紹介にも出てきます。「やわらかいものからかたいものまで作ることができる」3Dプリンタは国内でもここにしかないそうです。中に硬い骨が入って周りは柔らかい手の造形物などを見せていただきました。







研究紹介は起業家工房の演習室で、5名の先生方から伺いました。


吉岡 将孝 先生 ― 光で筋肉を読み、電気で動かす


手の動きを読むために、皮膚や脂肪を通る赤外光の反射率が筋肉の動きで変わることを使って、指の角度と力を非侵襲で測るセンサを開発されています。筋電センサはノイズに弱く、超音波は大型で高価なので、その代替として光を選んだそうです。一方、「動かす」ほうも機能的電気刺激(FES)を研究されています。皮膚の上から電極で筋肉に電気を流し、本人の筋肉で腕や指を動かします。


IoT工房で見せていただいた移動台車ロボットに載っているのはRoboSapiens社の伸縮アクチュエータ「BambooShoot Actuator」。巻き尺の金属テープを2本合わせて送り出すと断面が筒状になり、自重で曲がらずに最大約4メートル伸びます。応用すれば葉や実をつまむなど農作業にも役立つかもしれません。


脇田 翔平 先生 ― 特徴の少ない場所で、移動量を小さく見積もってしまう


LiDAR SLAMという移動しながら地図を作り自分の位置を求める技術と、深層学習による物体認識がご専門です。従来のスキャンマッチングでは「変化量が過小評価されてしまう」という問題があるそうです。ロボットの移動が速い場合や特徴の少ない環境では、正しく重ね合わせができないことがあります。とくに直線の廊下では移動距離が過小評価される、ということでした。


昨年度の卒業研究のテーマとして挙げられていたのは、部分地図生成を用いたスキャンマッチングによる3次元環境地図構築手法の検討、全方向移動ロボット2台の協調による物体搬送制御、遠隔操作ロボットに対する深度カメラを用いた作業支援システムの構築の3つ。2D/3D LiDARの地図作成・自己位置推定とカメラによる物体認識は、コミュニティ会員も興味を持ったのではないでしょうか。


大角 理人 先生 ― 水耕液のアンモニア態窒素の測定


専門は有機合成化学で、医薬や機能性材料の基本骨格を効率よく・安く・クリーンに作る反応開発と、化学的手法による産業廃棄物の再資源化が二本柱です。再資源化では、ココナッツの繊維から和紙や断熱材、柑橘の外皮から香料を作ることに成功されています。


詳しく伺ったのは、水耕栽培液のアンモニア態窒素の分析でした。方法はインドフェノール青吸光度法で、ナトリウムフェノキシドと次亜塩素酸ナトリウムを使います。反応時間の検討が難しく、30分以降で安定するのを待ってから測るとのことでした。アンモニア測定は最近増えている水耕栽培で特に重要とのことで、農業分野でも注目の内容でした。


中山 信 先生 ― モデルベースの制御で効率を上げる


モデルベース制御によるハウス環境制御などを紹介いただきました。モデル予測制御で目標に置いているのは実際の圃場でも管理の難しい「飽差」です。窓の開閉で飽差を適正に維持するモデルを開発し、窓開閉でハウス内気温と飽差を両得できるという結果を見せていただきました。


実際の圃場での課題はパラメータが多すぎることだそうです。外乱(外気温・湿度・日射・雨)、操作量(窓の開閉・加温・CO2施用・灌水など)、制御量(室内の温度・湿度・CO2・蒸散)と、相手にする変数が幅広くあります。さらに植物の指標として、深層学習を用いて植物の成長を制御目標に置く取り組みも紹介していただきました。


楠瀬 慶太 先生 ― 市民科学で、地域の記録を残す


高知新聞の記者を16年務めたのち高専で教鞭を執る異色の研究者です。ソーシャルデザイン工学科で社会課題を教えながら、市民科学による地域文化資源の継承支援を研究されています。歴史学・地理学・考古学・民俗学の知識と記者の経験を合わせ、住民とともに活動しながら必要な専門知識やノウハウを社会実装されています。地域資料の保存ネットワークで10年間に100件・5千点、大字誌づくりの支援を10年で約40集落、学校公文書の保存支援。課題先進県と呼ばれる条件不利地域での実践をモデル化し、全国の地域に実装していくことを目指しています。


農業に関係したところでは、土佐藍の復活への挑戦を紹介していただきました。かつて高知で作られていた藍を、育てるところからやり直そうとされています。さらに、タデアイの抑草効果も調べておられます。効果があれば、里山や耕作放棄地で、荒廃を食い止めながら藍も採る道が開けそうです。里山を所有する企業と協働して、その維持に取り組むプロジェクトも進行中だそうです。


高知工科大学 ― ユズ園を回る四足歩行ロボット



次に訪ねたのは高知工科大学 香美キャンパス。情報学群 画像情報工学研究室の栗原 徹 教授の研究チームが、四足歩行ロボットを使ったユズ園の作業支援に取り組まれています。高知大学 農林海洋科学部の研究者と2021年から共同で進められており、北川村のユズ農園では2024年11月と2025年7月に公開実験も行われています。


ご専門は画像センシング・光応用計測・計測工学。2025年に発足した高知工科大学 総合研究所 サイバーフィジカルインテリジェンス研究センターのセンター長も兼ねておられます。研究室のページには、カラー画像にとどまらずハイパースペクトル・サーモグラフィ・偏光といった「人間の視覚を超える見る力」に取り組み、それをロボットに組み込むと紹介されています。




背景として示されたのは「高齢化×人口減少」でした。高齢化で人手による重量物の運搬が年々困難になり、人口減少で生産量が縮小する。それが加工品の縮小に波及して、地域経済全体の縮小につながる。果樹園芸はさらに、労働集約的でありながら収穫適期が非常に短く、季節労働者の確保も年々難しくなっていて収穫期に人手が足りない。そのうえ中山間地が多く、傾斜や凸凹が課題になります。


そこで「犬型ロボットの背を借りよう!」と四足歩行ロボットの活用を研究されています。


想定している用途は、搾汁用果実や廃棄果の運搬(急斜面で人がコンテナを担ぐ重労働の代替)、鳥獣の追い払い、そして計測です。


運搬ではロボットを人のあとについて歩かせる=追従させています。当初は作業者が着けたビブスをカメラで捉え、画像に写る大きさから距離を推定していたそうですが、いまはビブスの検出はカメラ、距離の測定はLiDARと役割を分けた組み合わせに変えたそうです。



計測側では、1樹の葉果比(葉の数に対する果実の数)を推定する研究にも取り組まれています。


果樹には豊作と不作が交互に繰り返される「隔年結果」という現象があり、実がたくさんついた年は翌年の花芽へまわる養分が減ってしまいます。毎年の生産量を均一にするには、適切な葉果比に従って多くなりすぎた実を間引く摘果が必要です。


ドローンや四足歩行ロボットで園地の点群を集め、樹を分離して葉の量を出す、という進め方が取られています。またカラー画像と熱画像を同時に入力して果実を検出する研究もされています。実が青い時期は葉と色が近くて見分けがつきませんが、サーモカメラなら実が見える。動画で紹介していただき、一目瞭然で驚きました。果実の検出とフォトグラメトリを組み合わせる取り組みも探索中とのことでした。



夕方は高知市内に戻って懇親会。先生方も参加してくださり、見学中に聞ききれなかった話の続きができました。


おわりに


様々な分野の先生方から一日でお話を聞ける機会は貴重でした。技術者と研究者が直接交換できる場を、IoP技術者コミュニティとして提供できました。PROMPT-Xは引き続きIoP技術者コミュニティの事務局として、高知県の施設園芸産業のデジタル化・スマート化を支えていきます。


PROMPT-Xでは仲間を募集しています


PROMPT-Xは東京・鹿児島・高知に拠点を置き、お客さまの現場に入り込んで、業務課題に対して生成AIを含む最新技術をどう活かすかを一緒に考え、実装まで伴走しています。地方拠点から全国の先進企業・自治体と直接取引を行い、上流設計から実装まで一気通貫で手がける環境です。こうした活動に興味がある方は、採用情報ページをご覧ください。鹿児島での募集はジョブアンテナ鹿児島もあわせてご覧ください。


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