R7年度 IoP技術者コミュニティ成果報告会が開催されました
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2026年2月18日(水)、高知ぢばさんセンターにて「R7年度 IoP技術者コミュニティ成果報告会」が開催されました。会場参加とオンライン配信を併用し、コミュニティ参画企業をはじめ多くの方にご参加いただきました。
成果報告会について
IoP技術者コミュニティは、高知県が主催し、IoP(Internet of Plants)プロジェクトの知見を共有する企業・研究機関のネットワークです。2022年の設立以来、現在53社が参画しています。成果報告会は年度の活動を振り返り、参画企業の実践事例などを共有する場として毎年開催しています。PROMPT-XはIoP技術者コミュニティの事務局を務めています。
活動報告
PROMPT-Xから、今年度の活動を報告しました。定例会や交流会の開催、AIエージェント講座などの技術者講座シリーズ、井上石灰工業様への施設見学会、そして生成AIアイデアソンの企画・運営など、コミュニティの活動が着実に広がっていることをお伝えしました。今年度より高知大学の岡林准教授が新たにフェローに就任し、大学との連携もさらに強化されています。

データ連携基盤活用 実証事業報告
ネポン株式会社様から、「IoPデータ基盤を活用した害虫侵入対策」をテーマとした実証事業の成果報告をいただきました。自社の圃場センサー(温湿度・気流速)とIoPクラウド (SAWACHI) の気象データ(風向・風速・外気温)を照らし合わせて分析する手法で、害虫侵入防除が可能か取り組みました。
風向・風速は同じでも、ハウス内外の温度差が10℃以上になると外気が流入し、害虫の侵入リスクが急増することを明らかにしました。風速だけでなく温度差を重要な指標として捉える新たな知見です。この分析結果をもとに、リスクをリアルタイム確認できるスマートフォンアプリも開発しました。
ネポン社の実証事業に協力した農家の古川裕典さんもゲスト登壇しました。古川さんはIターンで高知に移住し、農業未経験から2015年に就農。わずか数年でトップクラスの農家へと成長しました。現在は正社員1名、4-6名のアルバイトを雇用し、シシトウ・ピーマン・ミョウガの3品目を栽培しています。古川さんは農家では珍しく、労務管理手法を取り入れて生産性を向上させました。経営に余裕が生まれ、その余裕がさらなる学びと経営拡大につながるという好循環を、古川さん自身の実践として紹介していただきました。
生成AIアイデアソン 発表
IoP技術者コミュニティでは、コミュニティ内で交流を図ること、そして発表の機会を設けることで人材育成に貢献することを目的として、昨年度(令和6年度)からアイデアソンを実施しています。実現性は問わず、自由にアイデアを出していただける企画です。生成AIが働き方を大きく変えつつある現状を踏まえ、今年度のテーマは「施設園芸農業と生成AI」としました。社会人チームには生成AIの活用を取り入れるという条件を設け、12月の中間発表会を経て、この日が最終発表の場となりました。
高知工科大学の学生チームは、農業における「不足」(労働力・高額設備)と「余剰」(遊休設備・規格外農産物)の同時存在に着目し、リソース貸借と需給マッチングの2つの機能を柱とするプラットフォームを提案しました。昨年度のERPコンセプトから発展させた継続参加で、遊休資源の活用による設備投資削減と廃棄削減による新たな収入源の創出を目指します。
パシフィックソフトウエア開発様は、天井レールを走行する移動式カメラロボットによる病害虫監視システムを発表しました。2本のワイヤーでカメラを上下・角度調整しながらハウス内を巡回し、葉裏の害虫も確認できる多角度撮影が特徴です。AI画像解析とSAWACHIの環境データを組み合わせて病害虫を検知します。
カミノバ様は、手書きの営農記録をGoogle GeminiのカスタムGem機能で読み取り、kintoneでデータを可視化するシステムに取り組みました。対話を通じてAIを育て、精度が安定した段階でGem化(プロンプト保存)するという実践的なアプローチで、「コードを書かない」3ステップの可視化フローを実現。読み取り精度を向上させた具体的なプロンプト設計を紹介し、数値読取精度は約99%を達成しました。
舞台AI様は、スマートフォンの音声入力を起点とした農業データ活用システムを発表しました。Difyチャットボットが音声内容を構造化し、SAWACHIに保存してデモアプリで可視化するまでの一気通貫のデモを紹介しました。農作業中に手が離せない場面での記録や、経験豊富な農家の感覚的な気づきをデータ化する手段として期待されます。
井上石灰工業様は、Google Apps ScriptとVertex AI(Gemini Pro)を組み合わせたFAX注文書のOCRシステムを発表しました。サーバーレス構成で約2~3日という短期間で開発し、社内の農業部門(ぶどう・トマト育種)で実務スタッフによるテスト運用と改善要望の収集がすでに進んでいます。

ミニディスカッション
5チームの発表後には、アイデアソン参加チームに加え、実証事業のネポン株式会社やゲスト登壇の古川さんも交えたミニディスカッションを行いました。ファシリテーターはPROMPT-X代表の天辰が務め、各発表者に対して取り組みのきっかけや実感を掘り下げていきました。
高知工科大学の学生チームには、昨年度のERPコンセプトから今年度のリソースマッチングへどのように発展させたかについて質問。学生の農業への関心を掘り下げました。古川さんからは「ソフトを使う強い理由が必要。なぜこれを作ろうと思ったのかを言えることが大事」と、実際にアイデアをプロダクトとして送り出すための力強いエールを送りました。
井上石灰工業様にはAI活用と内製化の考え方について質問が及びました。GemなどのAIツールが各部門で使われるレベルの内製化は既に進んでいるとした上で、自社固有の課題を突き詰めて解決するにはGAS+AIによる今回の形がベストだったと語りました。保守のしやすさも含めて身の丈に合ったシステムを選んだ経緯、そして「作っても現場のものに合わなかったら使ってもらえない。生産者も巻き込んで一緒に作っていくことが大事」という実用化への意識も共有されました。すでに現場スタッフにテスト運用を依頼し、追加要望が次々と届いているとのことです。
カミノバ様からは、業務の合間を縫っての取り組みだったため準備時間の確保が課題だったとの声がありました。発表資料の作成も含めて9割をAIで生成し、普段使い慣れたGeminiで画像読み取りに取り組んだとのこと。もっと時間があればグラフなどの資料を充実させたかったと語っていましたが、このような発表の機会は開発者にとって珍しく、刺激になったようです。
パシフィックソフトウエア開発様からは、農家との関わりがない中で図書館や個人的なつながりを頼りに調べたものの、農業現場の知識不足を痛感したという声がありました。社内プレゼンの機会はあっても外部で発表することはほとんどなく、今回は緊張したとのこと。動画生成AI「Sora」を使ったデモ動画が来場者から大きな注目を集めましたが、同じプロンプトでも毎回異なる映像が生成される中から素材を切り出してつなぎ合わせるという、「ガチャを回す」ような試行錯誤で仕上げたエピソードも紹介されました。
舞台AI様の小林さんは、IoP技術者コミュニティの定例会でネポン社の「人が一番のセンサー」という発言がアイデアのきっかけだったと明かしました。「どこまでデータ化できればいいですか」と勇気を出して質問したところ解像度が上がり、アイデアが固まったそうです。久しぶりに自ら実装に取り組み、デモ展示では来場者とのディスカッションも実現。実物を見た上でのリアルな声を聞けたことが大きな収穫だったと語りました。
PROMPT-X天辰は、IoP技術者コミュニティが農業課題の解決だけでなくエンジニア育成の場でもあることを改めて強調し、挑戦する若手エンジニアの姿勢がコミュニティの刺激になったと総括しました。
講評
フェロー・アソシエイトの皆様から講評をいただきました。
産業振興センターの市川氏は、コミュニティ設立当初に県内企業を回った経験を振り返りながら、「技術者が納期や品質に追い立てられずに楽しく学べる場を作りたい」という想いがここまで育ってきたと語りました。パシフィックソフトウエア開発様のようにアイデアソンなどコミュニティ活動にも協力的な企業にも触れ、こうした「遊び」からゆくゆくは商品化を目指していける段階に来ているとの期待を示しました。
高知工科大学の福本教授は、昨年はアイデア段階の発表が多かったのに対し、今年は実装済みのプロトタイプや実用化の一歩手前まで到達したチームもあることに驚きを示しました。特に移動式カメラロボットについては設計図まで出てきたことに言及し、「経営者からすると『会社のリソースをこんなことに使って』と思うかもしれないが、社員の成長やここから新しいビジネスが生まれる期待がある」と述べました。そして、IoP技術者コミュニティから技術商品や特許が生まれることへの期待と、来年度はグループでの発表も視野に、この勢いを継続してほしいと呼びかけました。
高知大学の岡林准教授は、全チームの取り組みを合わせて一つのソリューションにしたいと感じたと述べた上で、若手技術者にとって社外で発表する機会は貴重であり、この場の意義は大きいと指摘しました。さらに、経験と勘のデータ化は農業に限った話ではなく、ものづくり産業全般に共通する課題であることを紹介。農業界の課題をIT業界やものづくり産業に知ってもらい、互いに歩み寄って新しいソリューションを生み出す仕組みづくりに取り組みたいとの展望を語りました。
成果報告会の終了後は、隣の展示室でネポン社の実証事業やアイデアソン、高知大学や農業技術センターの展示を囲みながら、参加者同士の活発な情報交換が行われました。

関連リンク
IoP技術者コミュニティ 成果報告会(告知)
IoPクラウド SAWACHI



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